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荒井 宏明(あらい ひろあき)

荒井さんの写真北海道ブックシェアリング代表

1963年北見市生まれ。新聞記者を経て、2004年に編集・デザイン事務所札幌グラフコミュニケーションズ設立。路地裏探訪マガジン「季刊・札幌人」発行人。北海道の読書環境を元気にしようと、2008年1月に北海道ブックシェアリングを立ち上げた。

本とともに歩く

 つかまり立ちの頃から、絵本さえあれば手のかからない子だったらしい。小学校低学年では度を越して、ご飯もろくに食べず本ばかり読んでいるようなありさまで、「神経科に連れて行くか真顔で話し合った」と後に両親から教えられた。

 「三つ子の魂百まで」ということわざがあるが、極端なところはその後も変わらず、大学受験のセンター試験では国語が200点満点中195点、一方で数学は200点満点中64点と、非常にアンバランス。国語と英語以外はみな平均以下だった。いま流行の「できの良い1〜2科目で入学OK」という時代だったら学校の選びようもあるが、当時は1000点満点(7科目)。とりあえず、「実家(北見市)から一番近い国立」という両親の案に従って旭川教育大へ。しかし教師になる自信はなく、3年半ばで中退し、三省堂書店旭川店の店員になる。本に囲まれ、読書三昧。朝起きたら本を読んで、夜寝る前に本を読んで、仕事場で本を読んで、読書に飽きたら本を読む、という規則正しい生活。

 一方で音楽に目覚め、バンドを組んでみると、数社からプロの誘い。。ソニーの部長は「聖飢魔?の弟分バンドで売り出す」と言う。しかし、こっちはパンクバンドをやっているので、デーモン閣下の弟にはなれないとお断りを入れ、しばし落ち込み、書店の休みをもらって、数ヶ月ロンドンで暮らす。昼間は書店やマーケットをふらつき、夜はパブかライブハウスか劇場へ。大英帝国の熱にうかされたか、旭川に帰ってから書店員の職を辞し、ロンドンファッションのブティックを開き、ライブハウスをオープンし、全国組織の市民団体「リサイクル運動市民の会」の旭川支部長に就任し…と、この先もなんだかバランスの悪い経歴が続くのだが、本とは直接関わらないので割愛。

 やがて子どもが生まれ、札幌で新聞記者になった頃から、再び「本・活字」体質へ。現在は編集・デザイン事務所を経営し、路地裏探訪マガジン「季刊・札幌人」の発行人となり、北海道子ども読書推進会議の副会長を仰せつかり、北海道ブックシェアリング代表に就き、年に140〜150冊の本を読んでいる。「三つ子の魂」の飛行ルートに戻ってきたというわけだ。

北海道ブックシェアリングを始める

 さて、私が行なっている市民活動だが、最初に思い描いていたのは「知人から本をもらって自宅に保管し、日曜になったらリュックにつめて、誰でも提供と持ち出し可能な街角の図書コーナーに置いてくる」という地味なボランティアだった。ところが2008年1月のスタート直後から、「本があるから引き取ってほしい」「本が足りないから分けてほしい」「興味があるから活動に参加したい」と連日電話が入り、寄せられた本はあっという間に2万冊を超えた。家じゅう本だらけ。「なに、これ」という家族の冷ややかな目に耐えつつ、調べてみると、北海道の教育、保育、福祉などの図書施設では、予算不足で図書の購入や更新がストップしているケースが実に多い。不況のしわよせが「本」に来ているのだ。

 札幌市市民活動サポートセンターの事務ブースを借り、ボランティアを募り、教育分野や図書館と連携を進めた。札幌市教育委員会から業務提携の申し出を受け、同年10月に、図書の受け入れと提供を行う「札幌市図書再活用ネットワークセンター」を開設。これまでに約1万3千冊を無償提供してきた。提供先は、小中学校、保育園、幼稚園、病院、高齢者施設、子育てグループなどで、大学図書館や文学館、博物館などにも文献や資料を橋渡ししている。

 図書を寄贈してくださるのは札幌市内の方がほとんどで、ダンボールで3箱以上ある場合は、車で集荷に伺っている。ある夏のことだった。「絵本がいっぱいあるので取りに来てもらえますか」と女性の声で電話があった。行ってみると、素敵な絵本ばかりで、みな真新しい。「大切に読まれたんですね」というと「いいえ、まだ読んでいないんです。子どもが生まれたとき、2歳ぐらいになったら一緒に読もうと思って、毎月ずっと買いためていたんですよ」という。ダンボールには鮮やかな色使いの絵本の背がきれいに並んでいた。「1歳ちょっとで病気で亡くなったんです。そういう本だから捨てたり売ったりできなくて、ずっと手元に置いていたんですが、そろそろなんとかしなきゃ、と。新聞でブックシェアリングの記事を見て、こういう活動で使われるならすごくいいなと思って電話したんです」。運び終えて、丁寧にお礼を言って、運転席に戻った。エンジンをかけ、そして切る。視界のにじみが消えるのを待つ必要があった。

中学校の体育館で図書の仕分け作業 またある時は、アパートの大家という女性から電話があった。「小さなお子さんのいる家族には、入居祝いに新品の絵本セットをプレゼントしていたんです。以前はすごく喜ばれましてね。でも最近は、ご両親もお子さんも『ふーん』という感じで、私も気持ちが萎えちゃって。まとめて買っておいた絵本がかなりあるんですが、もらってくれますか」。案内された部屋には、昔から変わらぬ人気を持つ名作絵本が10タイトル、それぞれ十数冊ずつあった。運びながら、「僕が入居者だったら、娘ともども『なんて素敵な大家さんだ』と感動したはずです」と告げると、大家さんは階段の上でにっこり笑った。
 

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携帯:090-3468-6888(荒井)  FAX:011-887-6466
札幌市北区北8条西3丁目札幌エルプラザ2階市民活動サポートセンターNo.5
ホームページ  http://bookshare.web.fc 2.com/
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